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機密情報を外に出さない生成AI活用——ローカル・クラウド・ハイブリッドの選び方

「生成AIが定型業務に効くことは分かっている。それでも依頼者情報や財務データを外部のAIに入力するわけにはいかない」——守秘義務を負う士業や機密データを扱う企業で生じやすい板挟みです。実務に足る性能のAIを社内の機器や契約で守られた環境で動かせるようになりました。私たちはローカル・クラウド・その組み合わせの中から機密要件に合う構成を設計する支援をしています。この記事ではその選び方を整理します。

「全面解禁」も「全面禁止」も答えにならない理由

業務の中心が定型文書である業種ほど生成AIの効果が大きく、同時に扱うデータの機密度も高くなります。効果とリスクが同じ場所にあるため、会社全体をひとつの単位にすると「全面解禁」か「全面禁止」の二択になってしまいます。判断の単位を業務まで下げると出口が見えます。機密が絡む業務だけを守られた構成に載せ、それ以外は通常のクラウドAIで進める——この切り分けが現実的な出発点です。

機密度×構成の早見表

縦に業務、横に構成を並べた目安です(◎=向く、○=条件付きで向く、△=要検討、—=推奨しません)。あくまで一般的な目安であり、最終的な判断は各社の規程・契約・ネットワーク要件によります。

業務(扱うデータの例)通常のクラウドAI企業向けクラウド※1ローカル※2ハイブリッド※3
契約書・準備書面などの下書き(依頼者名・事件情報)
申告書・財務資料の下書き(顧問先の財務データ)
議事録・録音の要約(顧客名・取引情報)
社内規程・マニュアルの整備(社外秘だが個人情報は少ない)
公開情報の調査・文章の下書き(機密を含まない)

※1 入力を学習に使わせない設計と、保存の条件を契約で確認できるプラン
※2 社内の機器で完結させる構成
※3 機密度で送り先を分ける構成(振り分けの設計と運用が前提のため一律◎にはしていません)

表に◎が並ぶからといってローカル一択ではありません。企業向けクラウドの契約条件で足りる場合もあれば、ハイブリッドの振り分けが過剰になる場合もあります。構成そのものより「どの業務にどの機密度のデータが流れるか」の整理が先です。

3つの構成

ローカル——社内で完結させる

実務に足る性能のAIを事務所や社内の機器で動かせるようになりました。データが構内から出ない構成にできます。設計はネットワーク要件の確認——完全に遮断するのか、更新時のみ接続するのか——から始めます。機器の構成に合わせて、自動化した業務を並列で動かすこともできます。得意領域は要約・分類・文書の下書きなどの定型業務です。万能ではないため、業務との相性を最初に確認します。

予算と動かせるモデルの目安です(2026年8月時点の公開実測に基づく目安。機種もモデルも世代交代が速く、数ヶ月で変わります。特定製品の推奨ではなく、最新の対応は相談時にご案内します)。

予算帯(構成の例)動かせるモデルの例任せられる作業の目安
50万〜100万円前後GeForce RTX 5090(32GB)搭載機(50万円台〜)、128GBメモリのMacBook Pro(80万円台〜)など270億パラメータ級(Qwen系など)が4bit圧縮なら実用速度で動く。2,840億パラメータのMoE型(DeepSeek V4-Flash)を強めの圧縮で128GBのMacで動かした実測(毎秒16トークン前後・公開実測)もあります議事録・録音の要約/文書の分類・仕分け/型が決まった契約書・申告書の下書き
〜200万円前後Mac Studio(512GBメモリ)、RTX PRO 6000(96GB)×1枚のワークステーションなど1,000〜3,000億パラメータ級のMoE型も選択肢に入る上記に加えて、長い文脈の文書レビューなど(何をどこまで任せられるかは検証で確認します)
数百万円〜H100/B200級GPU、Mac Studio複数台のクラスタなど6,000億パラメータ超のフルスペック級が載るここまで必要になる業務は限られます。小さく始めて効果を見てからの拡張を勧めています

※モデルが「載る」ことと「快適に使える」ことは別です。実際の速度は機器の構成・モデルの圧縮方法・実装によって大きく変わり、最大級のモデルは高価な構成でも実用速度に届かない報告があります。導入前に実速度を検証します。
※データセンターのGPUサーバーやクラウド上のLinuxサーバーを「借りて」動かす方式は構外にデータを送るため、ここでの「ローカル」に含めません。その方式を選ぶ場合は契約条件の確認に加えて、保存先・暗号化・アクセス制御などを含めて設計します。

企業向けクラウド——契約で守る

入力データを学習に使わせない設計と、保存の条件を契約で確認できるプランが各社から提供されています。注意したいのは、学習に使われないことと保存されないことが別の話だという点です。この区別を約款で確認するところまでが構成設計に含まれます。

ハイブリッド——機密度で送り先を分ける

ハイブリッドが要る理由はコストと性能の非対称にあります。最上位の性能が欲しい作業ほど大きなモデルが必要になり、ローカルで動かすには予算が跳ね上がります。そもそもローカル版が提供されていない最上位モデルもあります。一方で、機密を含む定型作業の多くは中規模モデルで足ります。

そこで、機密を含む定型作業をローカルへ、機密を含まない高度な作業をクラウドの上位モデルへ送り分けます。高度な作業の例は複雑な論点の整理・長文レポートの構成・大量の公開資料の横断調査・コードの生成など。この分け方で機密の保護と性能の両立を目指せます。なお「機密を含み、かつ高度」な作業はこの二分では済まないため、個別に設計と検証を行います。

機密の検知とマスキングを前段に置いて送り先を分ける設計パターンは海外で事例が公開されています。振り分けの基準づくりと運用が肝心で、仕組みだけ入れても機能しません。

この3つに唯一の正解はありません。業務・データ・規程・予算から要件を整理し、合う構成を選ぶ——その設計の部分こそ私たちが支援する中身です。

進め方

  1. 業務とデータの棚卸し(初月)——どの業務にどんな機密度のデータが流れているかを一緒に整理します。
  2. 構成の設計と検証——要件に合う構成を提案し、小さく検証します。
  3. 定着まで伴走——現場で使われる状態になるまで運用を支援します。

士業の方へ

守秘義務は職業倫理と法律に根ざした構造的なものであり、「入力してよいかどうか」の判断コスト自体が現場の負担になります。「AIに置き換えられる」という言い方を目にしますが、実際に起きるのは置き換えではなく分業だと私たちは見ています。下書きと定型処理をAIが担い、判断と責任を専門家が担う——この分業の体制を先に作った事務所が時間の使い方で差をつけていくと考えています。

営業のご連絡からこのページに来られた方へ: お送りした内容は送付日時点のものです。最新の状況はお問い合わせフォームからご確認ください。

よくある質問

Q. ローカルで動くAIの性能はクラウドに劣りませんか?

用途によります。要約・分類・文書の下書きといった定型業務では実用域に達しています。一方で複雑な長文の生成や高度な推論はクラウドの上位モデルに分があります。だからこそ「どの業務を任せるか」の切り分けを最初に行います。

Q. データが外に出ない保証はありますか?

「絶対に出ない」と断定できる構成はありません。ネットワークを完全に遮断する構成から更新時のみ接続する構成まで段階があり、要件に合わせて設計します。最初の打ち合わせでネットワーク要件を確認するのはこのためです。

Q. 費用はどのくらいかかりますか?

機器の価格帯も支援の範囲も構成によって大きく変わるため、一律の金額を示していません。要件を伺ったうえで構成の選択肢ごとに見通しをお示しします。

Q. 士業以外でも相談できますか?

できます。金融・医療・製造など、機密データが理由で生成AIの活用が止まっている企業に同じ設計の考え方が当てはまります。


社外に出せない情報を調査の依頼文に書かないための確認手順は、AIリサーチSkillにも組み込んで無料で配布しています。

機密要件に合う構成の相談はお問い合わせフォームからどうぞ。業務とデータの棚卸しから一緒に整理します。

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