採用サイトは生成AIで作れる——でも「何を載せるか」はAIが決めてくれない
求職者の多くは、あなたの会社の採用サイトを見ています。閲覧率は調査によって約61%から90%——そして条件を絞った調査では、9割が「応募する前に」閲覧しています。それなのに、多くの採用サイトは「見に来た人が確かめたいこと」に答える作りになっていません。
生成AIの登場で、採用サイトや採用LPを作ること自体は劇的に安く、速くなりました。筆者も実際に、複数職種の求人票を、通常よりもずっと短い期間でAIと一緒に書き上げた経験があります。ただ、その経験から言えるのは逆説的なことです。作るのが簡単になったからこそ、「何を載せるか」を決める部分の差が、そのまま結果の差になる——この記事では、その「人が決める部分」を具体的に整理します。
データで見る採用サイトの現実
まず前提となる数字を確認します。
- 直近1年以内に転職した25〜49歳の有職者への調査(n=515)では、90.3%が応募前に採用サイトを閲覧し、80.0%が「応募の決め手になる」と回答。また、中途採用に特化した採用サイトがない場合、71.3%が「欲しい情報が見つからず、調べる意欲が下がる」と答えています(カケハシ スカイソリューションズ×マクロミル調査・2024年)
- より広い母集団の調査(n=3,317)では、最終的に入社した会社の採用サイトを見た人は約61%。閲覧者の64%は複数回訪問しています(ベイジ・中途採用における採用サイト利用実態調査2024)
- 採用サイトは主に応募前に見られますが、新卒では社員インタビューなどのコンテンツが面接前にも見返される傾向が観察されています(WACUL・2022年)
ひとつ正直に書いておくと、この種の調査の多くは採用サービスを提供する事業者が実施したものです。「採用サイトは大事」という結論に寄りやすい構造は割り引いて読む必要があります。閲覧率も調査条件によって約61%から90%まで幅があります。それでも、どの調査でも過半の求職者が採用サイトを見ている点は変わりません。
図1:同じ「閲覧率」でも、調査対象と質問の違いを踏まえて読む必要があります。
求職者は「確かめるため」に読む
応募前に見て、選考中にも見返す。この行動パターンから逆算すると、採用サイトに必要なものが見えてきます。
応募を迷っている求職者が知りたいのは、かっこいいブランドムービーではありません。「この会社に応募して本当に大丈夫か」を固めるための、地味で具体的な情報です。
- 選考は実際どう進むのか。面接は誰が出てくるのか
- 配属先の仕事の一日は、実際どう流れるのか
- 給与・評価・働き方の実態。よくある質問への率直な答え
つまり勝負を分けるのは、デザインの華やかさより「不安に答える情報の量と具体性」。そして、この種の「地味で大量のコンテンツ」を整った文章にする作業こそ、生成AIがもっとも得意とする領域です。
求人票を書いてわかった、人とAIの分担
筆者は以前、ある会社の採用強化で複数職種の求人票を、通常よりもずっと短い期間で作成したことがあります(採用サイトの作り直しにも携わりました)。生成AIをフルに使いましたが、振り返ると、人とAIの分担にははっきりした構造がありました。
人が決めたことは、突き詰めるとすべて「会社にしか答えられない問い」でした。
- この会社の魅力は、突き詰めると何なのか
- どういう人に来てほしいのか
- その人に対して、どの魅力を、どの順番で見せるのか
- 会社として将来どうなっていきたいのか
AIに任せたことは、判断のあとに来る「展開と調整」です。
- 決めた方針を、職種ごとの文章に展開する執筆作業
- 給与・条件面を、社内の既存ルールと市場相場の両方に整合させる下調整
実際にはこの2つは綺麗には切り分けられず、書きながら行き来します。ただ、順番だけは一貫していました。人の判断が先、AIの展開が後。逆にすると、それらしいが誰の心にも刺さらない文章が量産されます。
ひとつ失敗談があります。会社の思想や大事にしている価値観のくだりを、AIの整った文体に任せたところ、当たり障りのない「どこかで読んだ文章」になってしまったのです。最終的には、社内で実際に使われていた生々しい言葉をほぼそのまま残す形に戻しました。綺麗さより、その会社の体温が伝わることのほうが大事な箇所が、確かに存在します。
AIで作る前に、人が決める4つのこと
この経験を一般化すると、採用サイトを生成AIで作る場合でも、着手前に人が決めるべきことが4つあります。
1. ターゲティング
誰に読ませたいのかで、載せる情報の優先順位は全部変わります。経験者と未経験者、20代と40代では、確かめたい「不安」が違うからです。
2. 他社との差別化
同じAIに同じ指示を出せば、どの会社でも似た文章が出てきます。生成AIの時代、差別化の源泉は文章力ではなく、その会社にしかない事実をどれだけ掘り起こせるかに移りました。
3. 会社の考え方の言語化
ミッションや大切にしている価値観は、AIに「それらしく」発明させることもできてしまいます。しかしそれは求職者に必ず見抜かれる嘘です。ここは社内の生の言葉から拾い上げるしかありません。
4. 市場相場の監査
給与や条件が市場相場とズレたままなら、表現をどれだけ磨いても応募は来ません。文章を書き始める前に、条件そのものが戦える水準にあるかを確認する。地味ですが、実は最初にやるべきチェックです。
AIで作った後に、人が回す3つのこと
公開したら終わり、ではありません。作った後にも人の仕事が3つあります。
5. AIデザインの品質管理
生成AIで作った画像やデザインは、放っておくとページごとにトーンがバラつき、「AIっぽさ」が透けます。ブランドとしての一貫性を保つ管理は人の仕事です。
6. 載せる数字の裏取り
この記事を書くにあたり、「採用サイトで応募数が◯倍になった」と謳ういくつかの記事を原典まで遡って確認したのですが、今回確認した範囲では、企業名・期間・実数の3点が揃った事例は見つかりませんでした。実績数値を載せるなら、出どころに責任を持てるものだけにする——AIは数字の信頼性を担保してくれません。
7. 計測とA/Bテスト
ここが生成AI時代のいちばん面白いところです。これまで求人票のA/Bテストは、バリエーションを作るコストが高くて現実的ではありませんでした。しかし「募集の中身は同じ、表面の言い回しだけ違う」バリアントの量産は、まさにAIの得意技です。計測を仕込み、言い回しの違いで応募がどう変わるかを現場で実証する——「作って終わり」から「回して学ぶ」への転換が、ようやく現実的な選択肢になりつつあります。
正直に書くと、この計測とA/Bテストの仕組みは、筆者自身もこれから実案件で検証していく段階の提案です。だからこそ、結果が出たらこのブログで数字ごと公開するつもりです。
図2:生成AIは判断の代替ではなく、決めた方針を速く展開する役割を担います。
自社の採用サイトをチェックする7つの問い
最後に、この記事の内容をチェックリストにまとめます。
- 誰に読ませたいか、一言で言えますか?
- 自社にしかない事実(数字・エピソード)が3つ以上載っていますか?
- 会社の価値観のページは、社内の生の言葉で書かれていますか?
- 給与・条件は市場相場と比べて戦える水準ですか?
- 応募を迷っている人が知りたい情報(選考の実態・仕事の一日・率直なFAQ)はありますか?
- 載せている実績数値の出どころを説明できますか?
- 公開後、どのページが読まれたか計測できていますか?
3つ以上「いいえ」があるなら、作り直しの前に「何を載せるか」の整理から始めることをおすすめします。
生成AIの基礎から学びたい方は生成AI学習ガイド、業務での実践を体験したい方は実践ワークショップもあわせてどうぞ。
そして、自社の採用サイトについて「何を載せるべきか」から一緒に整理したい方は、30分の無料相談でお話しできます。作るのは安くなりました。決めるところを、一緒にやります。